F850GSのレビュー

 1000kmの慣らしを終えたら書こうとか、2000km走ったら書こう・・・とか、思っているうちにもう1万kmも見えて来てしまっている現在。

1年乗ってきた感想をまとめておきます。

はじめに

自分について

バイク歴は長くアレコレのジャンルに10台以上は乗り継ぎましたが、基本的に軽量スポーツ好きのツーリンガー。身長が170cmにぜんぜん及ばない低さ故、オフ車は常に足つきリスクとの戦い。

子供ができてからしばらく原付のみの時代があった後にNinja250SLでまともなバイクにリターン。最初は奥武蔵グリーンラインあたりをツーリングして楽しんでいたがダートに入り込むようになってきたのでアドベンチャーに乗り換えよう・・・ということでBMW F850GSに辿り着きました。


購入時の比較対象

当初、真っ先に購入候補に考えたのはG310GS。

GSはやはりアドベンチャーバイクの中でも単純に見た目が格好良いし、子供のころに東京モーターショーで見て「なんかすげえバイクだな」と思った憧れもある。ただ、いかんせんデカい。軽くあるはずのオフロード車においてともかくデカい。とても俺には乗れそうにない。

そう思っていたところに登場したのがG310GS。比較的軽量だし、デザインもかなり格好良い。BMW Motorradのサイトで眺めながら、もうコレしかないだろというくらいに購入の意思を固めていた。

そんな折、東京モーターサイクルショーの開催があったので喜び勇んで出かけ、BMWブースで跨いでみた。・・・・またいで見たら・・・以外にシート高いんですよ、310GS。

その一方で、同時に展示してあったF750GS。あれ?こっちの方が全然、足も付きやすい。外見の迫力と裏腹に、跨いでしまうと、意外なほどに大きさを感じない。これだったらむしろ乗れるのでは?と、F750GSが購入候補に。

なので今度は近所のディーラーに試乗に行ってみる。

F750GSは本当に走りやすかった。なんというか、オフロード系に乗っている気がしない。低身長の俺でもべったり足が着いて安心感がこの上ないし、交差点などでちょっと機敏に倒しこんでみても、ロード系のバイクさながらの自然な操舵感。あー、これは舗装林道系の峠なんか楽しそうだなと。

もうこれ買おうかなと、だいぶ思ったのだけど・・・。

同時に試乗可能だったのがF850GS。同じエンジンを搭載していて、ホイールも大きい。一応ということで乗ってみると・・・。

まず、驚いたのはエンジンの性格が全然違う!
これはもう、素人でもあからさまにわかる電子の力。極低速ではむしろ750の方がぐっとパワーが出る感があり力強さも感じたが、850の方が、回すと湧き上がるパワー感というか、エンジンの軽快さというかが・・・・。

好みの問題だろうが、自分は好んで2ストにも乗っていたくらいだから、ドラマチックでピーキーなエンジン特性に惹かれる。で、そうは言っても余裕のある排気量のパラツインで電子制御バリバリなので、本当の意味でピーキーなんてことはないのだから、これは趣味的にこっちの方がいいだろうと・・・。

一方でハンドリングはちょっと、「ああ、これはオフロード用なんだ」と思わせるもっさり感。やはりフロント21インチの大径・かつ細いというのは、如実にハンドリングに影響を与えていて、750とはもう別世界だった(どちらかというと悪い意味で)。とは言え、このロードでの違和感こそがオフロードでの自然さにつながるのだろうという期待はある。

でも、最終的に850を選んだ最大の理由は、実はエンジンでもハンドリングでも無かった。

単に以下の理由によるものだ。

  • 倒立フォーク、しかもアウターチューブが金色なのがカッコいい
  • タイヤのサイズによりもたらされる全体のシルエット、雰囲気がオフロードというかラリーっぽくてカッコいい
  • スポークタイヤがカッコいい
このチョイスは良かった。購入して1年経つが、ツーリング帰りにSAに佇む自分のGSを見るたびに、「ああ、やっぱり俺のGSはカッコいいな」と思っている。まあ、これは完全に好みの問題だけど、バイクは趣味だから好みの問題こそが最重要の問題でもあるので。

とは言え、先にはっきり遠慮なく言っておくと、F850GSとF750GSで迷っている人がもしこれを見ているならば、「上記の『カッコいい』というメリットに特に同意でなければF750GSの方が良い」と言っておきます。パワーも十分だし足が圧倒的に楽に着くし、道路を走る上での軽快さが違うし、フラット林道を走るのに何の問題もなさそうなので。


BMW F850GSのレビュー

素人がわざわざ書くのだから、個人的感覚に基づいた思い込みによるレビューをします。

乗車感

オンロードは楽しい

21インチのフロントタイヤによるハンドリングは鈍い。
17インチタイヤのロードとの比較ではもちろん、試乗したF750GSと比べても、明らかにフロントに変な慣性というかジャイロ効果というかが働いている感じで、曲がろうとすると曲がらず、いつもアンダーステアというか、思ったのより1本外側に膨らむ。

が、その感覚には、慣らし程度で馴れた。

ハンドルの手応えとしてはとかく曲がらないという印象だが、バイクをぐっと寝かすと曲がる。このバイクのジオメトリーはそもそも、体を内側に入れてバイクを起こして曲げるような格好ではない。GSの前に乗っていたのはセパハンの250ロードスポーツ(Ninja250SL)だったので、舗装林道でも腰をシートの内側に落として走っていたし、そうするとスイスイとよく曲がったのだが、F850GSはそういうのと違うということで、乗り方を変えた。

具体的には、思い切りリーンアウトで、体は起こしてバイクは寝かすオフ車曲がりスタイル。きついコーナーではイン側の足も出してしまう(MotoGPリスペクトな感じではなくてオフロード的に)。

そうして車体をストンと寝かすと、くるっと回ってくれる。停車時には「5度傾けたら立ちゴケする」と思いながら慎重に取り扱ってる200kgを優に超える車体だが、舗装林道の激坂ヘアピンでブーツの先やステップをするほどバイクを寝かして曲がると、なんとなく「大型バイクを操ってる感」が楽しい!

実際のところ、良いペースで気持ちよく走れるし、舗装路とは言え山のワインディングは思わぬところで荒れていたり枯草や砂利があったり。そうした状況にもオフロードスタイルのコーナリングは対応しやすいので、慣れてしまえば奥武蔵グリーンラインのような細いワインディングも楽に軽快に、スポーツライディングといった感覚で走れる。

大きな車体を左右にリズミカルに寝かせて走るのは、セパハンでイン側に体を突っ込んで走るのとはもちろん違う感覚だが、軽量の250トレール車などでのそれともまた違う独特の感覚だ。

いろいろな記事など見ていると、アフリカツインあたりはきっと似た感じなんだろうなと思うけど(あるいてはテネレ700あたりとか)、R系GSとかV-Stromあたりとはまた違うのだろうなと思う。



オフロード

実際にはオフロードというよりはダートロードなのだけど。

走破性は高いと思う。やはりタイヤの直径が大きいということは、穴ぼこにハマりにくいということだろうと思うし、細いタイヤは深い砂利などでは刺さるはずで、たぶん良い。

まあ、そういう特性がどうなのかということはさておき、重要なことはやはりDSCとASCとか。何かそういう電子制御だ。

エキスパートには無用の長物なのだろうが、自分のような下手くそかつ雑なライダーにはこれが実にありがたい。ブロックでないタイヤでガレぎみの坂のヘアピンを登ろうというような状況で、失速しそうになりアクセルを捻ると、850ccのパワーが無駄に炸裂し空転しリヤが流れ出すというシチュエーションが何度もあった。

大昔にオフ車に乗ってちょっと林道を走っていた頃の感覚では、そうした場合はそのまま滑って回ってベシャっと転倒するのだが、LED上に謎のインジケーターが点滅するとともにいつのまにかGSはトラクションを回復して無事に坂を登っている。

これがあるので、アクセル開けすぎてリヤがスライドしてコケるというイメージはほとんど無しでダートを走れるのは安心だし、実際のところ無事に進むことができている。

結局のところ、テクノロジー万歳だ。確か230kgくらいはある車体は俺のようなちんちくりんには重すぎてデカすぎるし、100馬力に迫る出力も強力すぎる。だが、それらの「扱えなさ」は尽く、電子制御によりマイルド化されているので、敢えてENDURO PROモードなど選択しない限りは牙を剥いてくることはない。

転倒したり、狭い林道でUターンを強いられる場合には取り回しの悪さはネガティブ要素だ。だが、実際にはそんなアクシデンシャルなシチュエーションはそこまで多いわけでもなく(日に10回くらいコケる楽しみ方をしたい人はさすがに違うバイクを買った方がいい)、たまに起こす分にはそこまで構えることもない。

いや、正直自分は、初めて林道で転けたときに起こせなかったのだが。それはスキルの問題であったと思う。長く重たいバイクに乗っていなかったので、すっかりバイクの起こし方というものを忘れてしまっていて、腕で起こそうとしていたのが敗因だった。
YouTubeなどで研究した後に転けた時には、さして苦労なく引き起こせている。

また、ダートでの方向転換では、サイドスタンドを軸にして後輪を持ち上げて回転させるターン(※降車して行う)でわりと何とかなる。

サービスエリアや道の駅その他

勇ましいアドベンチャースタイルとメカメカしいエンジン周り、ハリキリモードのスポークホイールなど、ツーリングの行き帰りに自分で眺めて、「俺のバイクかっこいいな」と悦に入ることが出来る。まあ、これはどのバイクでもたいがいそうだろうけど・・・。

総合して言えば

とても快適な高速道路の移動、わりと楽しい(特にロード寄りのタイヤの場合)ワインディング走行、非常に楽しい(特にダート寄りのタイヤの場合)未舗装林道走行。

そして、なんとなく「旅の気分」を盛り上げてくれるに十分なルックス。

非常に気に入っている。

燃費、積載性

燃費は意外に良い。カタログでは25kmくらい?だった気がするが、実際には30km近く走ってる感じ。850ccという排気量からすると相当優秀。

積載性は、もちろん悪くない。ワンタッチで装着可能な純正パニアが便利なんじゃないかと思っているが、まだ買ってないので何とも・・・。


ただし!

以下は気に入らないので正直に言っておく。

  • 純正アプリと純正液晶メーターを使ったナビが、日本では機能しない。
    • 地図の版権の問題なんだろうなとは思っているが、カタログで使えるっぽく出ていて期待していたのにこれは酷い。なんとかしてくれ。Appストアのレビューでは「詐欺」の文字が踊っている。そう言われても仕方あるまいよ。
    • 追記:2022年末くらいだったろうか?アプリのアップデートでついにこの問題は解決した。この純正ナビはコマ図風?の案内で面白いのだが、目的地設定が非常にめんどくさいので余り使ってはいない・・・。
  • クラッチレバーの根元が折れるというのはどうか
    • 立ちゴケでレバーが曲がり、内側にサンドされている樹脂パーツが折れたためにクラッチが動作しないというショボいトラブルが発生。外のアルミレバーは軽く歪む程度で耐えたのに、肝心の梃子部分が樹脂で折れるってのは構造的に問題あると思う。
    • 追記:いちど上手くコケてレバーが折れてショートレバー状態になってからは根本が折れる心配はなさそうなので安心して乗っている。
      • スタイリッシュな社外品のショートレバーを付けるのがよりベターなのだろうけど。
  • ローシートの座り心地はイマイチ
    • よく言われてるが実際、横が張り出し過ぎていて足つきを阻害するし、内腿にあたって不快な感じもあり。もうちょっと真面目に造形しろと言いたい。これ作った奴、ちゃんと座ったのか?と。

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