F850GSではじめてのダートに挑む(剣ヶ峰七重線)

前回、慣らし明け初のツーリングは国家権力のトラップによるダメージで意気を削がれて頓挫した。
なので今回、改めて出撃。秩父だが、短い林道を走ってみようと思う。Ninjaでも走ったことがあるところなので大丈夫だろう。





なんといっても、セパハンのNinjaで走ったダートだ。GSで行けないなどという話は有り得るはずもない。距離もたいしたことはないし、出口も入り口も見慣れた場所だ。楽勝だ。

前日にバイク仲間のP君と(オンラインで)雑談した際に、「慣らしも終わって早速外装慣らしですか」と揶揄されるも「そんなものは所詮、通過儀礼よ」などと強がって見せたが、もちろん、実際にそんな儀式を受け入れるつもりはない。

今日のプランは、楽勝の短い林道でGSで初のダートを楽しみ、その勢いで奥秩父で以前にセパハンでは無理と挫折したダートにも挑むというものであった。

ダートを制覇したあかつきには、カップヌードル味噌でハングリアン民族を体現するべくバーナーと薬缶も持って、朝早くに家を出た。

GoProだか何だかで撮影などしなくても俺自身にはすでに、ガレ場もものともせず、ゲレンデシュポルトを颯爽と乗りこなしてダートを駆け抜ける自分の姿が見えていた。




そして、結果。

可哀想な新車のGS

まだ新しいマシンとの対話が足りていなかったらしい。君がこんなに、ごろーんが好きだったとは知らなかった。

時を戻そう。

俺はとある林道の入り口に着いた。

記憶していた以上にフラットな様子だったので、まさに準備運動程度だなと思った。

スタンディングもほとんど必要ないなと、途中から座って走っていた。
楽だわ〜、スピード出し過ぎには注意しないとな〜、とそんな感じで適当にトコトコ走っていた。

すると、路肩が一部崩落しているところがあり、それ避けて適当に進んだら、





ガレた溝に嵌って停車していた。

まあいいかとアクセルを明けたら後輪が空転。あれ。まあ・・・ブロックタイヤとかでないし・・・ここ結構激坂だしな・・・。

さてどうしようと思って、・・・最初はなんてことないとおもったのだが自分が手にあまる状況にあることん気づいてしまった。

前方には深い溝と段差があり、通れそうなのは谷側のシングルトラック。だが、そこに上がるには勢いが必要。でも、勢いをつけて発進すGSを御する技術はまだ俺にない。谷に落ちても死にそうなほどではないが、その場合にはGSは二度と道路を走れず、俺も妻から金輪際バイク禁止を言い渡されるだろう。

・・・下がろう。それしかない。

だが、さっき不用意に通り抜けた路肩崩落。あれがあるので、降りて下がる足場も心もとない・・・。

さんざん考えたが、進んで谷に落ちれば絶対上がって来れないが、戻ってバイクを倒す程度なら傷だけだろうと、ずるずる後退することを決めた。

・・・だが、バイクが動かない。下りなのに。なんで・・・!

これが200kgオーバーというものか?いやしかし!重力にしたがって下がろうとしているのに!!

石が引っかかっているのだろうか?そう思いタイヤの後ろを掘ってみたり。重い車体を忍足引いたり揺すったり、倒れそうになって全力で支えたり。

さんざんやって、ふと気づいた。いつのまにかギヤがローに入っていたのだった・・・。

ニュートラルに入れたらバイクはずるずるとと下り始めた。なんだよ・・・と脱力したが、ここまでですでにだいぶ体力を消耗していた。それでもなんとか、路肩崩落でやや狭くなっていた箇所も通過。

あとは、もう少し平らなところで方向転換をして・・・。

よし。何とかなったか。

そう思った瞬間。よろよろっと、山側、自分の向こう側にGSは倒れんこんでしまった。

・・・まあ。

それなりのショックはあるが、さっきまで谷に落ちるかどうかを心配していたのだから、立ちゴケくらい大した問題じゃない、と気を取り直してバイクを起こす・・・・起こそうとするのだが・・・。

まったく起きない。

あれ。

山側の土にめり込んだバックミラーが、揺すってるうちにメキっという音とともに取れたのはもうどうでもいい。だが、山側の斜面にめりこむように、それでいて水平近くまで倒れたバイクを、全然起こせない。

どうしたものか・・・・。叫びながら力を入れてもちょっとしか動かない。アニメとかならそろそろ何かが覚醒して、荘厳なBGMとともにレベルリミットを超えた超絶な力が発揮されてもいいタイミングなのだが、どうも俺にそういう都合の良い覚醒は訪れない様子。

・・・・「力が、欲しいか?」そんな声がどこかから聞こえてくる代わりに、スマホの着信音が聞こえてきた。

今日、別ルートでツーリングに行くと言っていたP君から「寝坊した」というどうでいいメール。・・・いや。どうでもよくはない。これは福音である。

俺は仕事でもバイクでも大先輩であるというプライドを2秒で捨て去り返信した。「助けて!」

おかしい。

今日の俺はアドベンチャー(冒険者)のはずだったのに、まるで村娘のようなポジションになってしまっているではないか。

・・・そもそも、ぶっちゃけるとこの林道は通行止だった。ゆるい車止めが置いてあるだけだったし、休日で伐採作業もしていないだろうから行けるとこまででも、などと思って入ってしまった。

そういう手前、他のライダーが通る期待は薄かったし、実際、一人で苦闘している間に誰も来なかった。歩いて林道出口に行けるが、そこで人を呼ぶのも憚られる。他人にルールを破ることを求めることになるからだ。

俺は痛く反省した。バイクで通行できるかどうか以前に、こういう状況が問題だったのだと。少なくとも俺のような、ダートのスキルもない人間が侵入するべきではなかった・・・。

幸い、仏のごときP君は快く2時間かけて駆けつけてくれた。

彼のバイクはオフロードモデルではないので、林道の入り口で合流して歩いて現場に向かう。二人いて起こせば後はなんとかなる・・・と思ったのだが・・・。

現場についてびっくり。

ごろーんしていたはずのGSは立っていた。

P君が着く10分ほど前。マウンテンバイクの男性が来た。俺より少しまた年上くらいだが、これから林道を登るとのこと。

途中にバイクが寝てれば不審だろうからと、俺は立ちゴケしてしまって起こせなくなって友人の助けを待っているという話をした。

「二人なら起こせるの?」と聞き返された言葉には、手伝おうかというニュアンスが込められていると感じたが、俺は遠慮した。もうすぐP君も着くし、このおじさんは今日はMTBに乗るためにここまで来たのであって、間抜けなライダーと散策するために来たのではないはずだから、現場まで一緒に歩いて行くのは申し訳なかった。

だが、彼は、一人でGSを起こしていってくれたようだった。


予定を変更して押っ取り刀で山奥まで駆けつけてくれたP君、そして、名も知らぬライダーのバイクをわざわざ起こしていってくれたMTBのおじさんと。

普段、人と馴れ合うと人間強度が落ちるなどと強がっているが、この日は久々に、ああ、人という字は支え合っている・・・というか、俺って根本的に優しい人たちに助けられて何とかなってるのだな・・・と実感した。

が、それより何より悔しかったのは、あのMTBのおじさんは一人で起こせた俺のバイクを、俺は一人で起こすことすら出来なかったということだ!

俺のバイクなのに!

確かに、ローに入れたままで押したり引いたりして無駄に体力を消耗していたりもした。現に即日で手脚も背中も痛くなるほどだったのだ。だが、それにしてもだ。

それにしても、後から考えると起こし方も下手だったし、実際、ここ数ヶ月の俺は仕事の多忙さにかまけて徹底的に運動不足でもあったし(そして俺は運動しないとすぐに筋肉が落ちるタイプでもあり)、そういうこともある。

だが何より、俺はのっけから「200kg以上あるものがこんな足場の悪い場所に寝てたら、俺には起こせない」と諦めていた。一応起こそうとして汗は掻いていたが、P君を頼るか、保険のロードサービスでも呼ぶか、待ってれば誰か通るか?そんなことばかり最初から考えていた。

体力が落ちているのは本当なので、気合があっても俺には起こせなかったかも知れない。けど、どっちにしても、やはり限界より先に自力解決を諦めていたのだ。それは、「アドベンチャー」という言葉とはもっとも遠いメンタルではなかったか。

次に転けたら絶対に自力で起こすこと。そのためにもまず、人並みの体力は戻すこと。
それから、そもそももっと慎重に、ただダラダラ遅くではなく集中して走ること。

いろいろと反省の多いツーリングとなってしまった・・・。


MTBのおじさんがこのブログを見ることはないだろうが、本当にありがとうございました。おかげでいろいろ目が覚めた気がします。

つうか、ピカピカのBMWで無駄にダート入って、立ちゴケして自力で起こせないで途方にくれてるって、死ぬほどかっこ悪いな本当に!

・・・慣らし終わってから、ツーリングに行っては赤切符、転倒と、まだ安全無事に走っれたことが一度もない。次こそは、「1日楽しかった」と言えるツーリングがしたいものだが・・・。



でも、GSって頑丈だったのは嬉しい。

ドロドロだったけど、家について水で流したらこの通り。



山で寝転んだと思えない外装。👍



ミラーは折れたのとエンジンガードに擦り傷は少し着いたけど、他はほぼノーダメージ。マフラーの擦れ痕もたぶん普通には気づかないし、ピカールで落ちそうなレベル。


さすがアドベンチャーを謳うだけありますなあ!こりゃあいいや。

早くマシンに多少でも釣り合う体力を付けないと。


 * * *

しかし、なんでこんなところを前にはNinjaで走れたんだろう?と思ったが・・・記憶をたどるに、その時には「失速したら絶対に発進できない」という確信があって、だからスピードを出せない一方で殺さないように走っていて、それを為すためにもライン取りを先読みすべく、すごい神経を尖らせて走っていた気がする。

今日は、「GSなら楽勝だろう」とのんべんだらりと走っていたので気づいたら止まっていた。止まってしまったら、結局発進できなかった。まあ、タイヤの溝はロードモデルとたいして変わらんし、そりゃそうか。

やはり、バイクの性能を過信して慢心したということなのだろうなあ・・・。 典型的なダメなおっさんGSライダーだなと、ますます反省を深めざるを得ない・・・。


 * * *

つうか、やっぱりあの林道ってあんなに難所あったっけなあと思ってYouTubeなど見てみたら、確かにあの辺が難所でガレている感だけど、あんな剣呑なクレバス状の溝はない様子だった。まあ、それにしても迂闊に進み過ぎたのには変わらず、大いに反省しなければなるまいな。

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