ドナドナされるF850GS
帰りは列車の旅コース。秩父は和銅黒谷駅。日本で最古の通貨、「和同開珎」て皆さん知っていますか?小学校の社会の授業をちゃんと聞いていたなら知っているはず。その、かいちん。それが作られたところがここ。
黄昏も消えかけて宵の帳が下りる無人駅。たたずむ一人の中年男性。荒野を行くようなブーツにジャケット、手袋をしている。旅情がある情景ですね!
時を戻そう。
ドナドナされるかわいそうなGS。
秩父から都幾川に抜けるのに、定峰峠はまだ通れないんだろうなーと思いつつ行ってみて、案の定通行止めだったから戻り、途中で「定峰林道」の分岐を発見。これもどうせ通れないんだろうなーと思いつつ、興味があって行けるところまで行ってみようと。
で、1kmくらい進んだろうか?
集落のなくなったあたりでやはり通行止めでバリケード。普通に止まって引き返せばそれで良かったのに・・・。なぜか、わざわざABSを解除して、リヤをスキッドさせたんですね。
狭い道でそのままUターンできるほどの腕はないので、半分回って止まって、あとはスイッチバック・・・みたいなつもりで。
そもそも頭が疲れてたんですかね。上り坂でそれやれば、止まった時には傾斜の下側に足を着く。そもそも足ツンツンなので、それじゃ当然、車体が支えられない。
で、そのまま立ちゴケ。
今まで2度転かしている右側じゃなくて、初めて左側。
あちゃー、と思ったけど、いつもながらGSの外装はほとんど傷ついていなかった。引き起こしも普通に出来た。ミラーも折れてない。ナックルガードは傷ついたけど、これはまあご愛嬌かなと。オフ車なわけだし。
幸いなことにレバーも折れてない。
身体はもちろん何ともないし、ま、アドベンチャーならこんなこともあるかと(ダートでも何でもない立ちゴケってのはちょっと違う気もするけど)、エンジンを始動しようとしたら・・・。
クラッチがなぜかスッカスカ。
良く見れば、レバー部分は無事だが、ブラケット側で欠けた?ようで、バネばびよんと出て、テコ的な作用が何もない状態。クラッチレバーはあるが、あるだけ。握ろうが開こうか、何も操作できていない。
これどうすんだ?こんな山奥で・・・・。なんという絶望感。
まあ、こういう場合とりあえず、営業しているウチに連絡できるところにしておかないと電話を取り出すが・・・・電波が来てない!
心臓がいまさらバクバクしてきた・・・。確かに命の危険には関係ない。だが、そもそも3時間くらいしか無かったのだ。帰って仕事もしなきゃいけないし、他にも用事もあった。
なのに、これは俺は・・・今日中に家に帰れるのだろうか?帰ったとして、GSは?まさかこんなところに放置?
何はともあれ、ここで悩んでいても仕方ないので、街(は遠いけど、そっちの方面)へ向かって歩き出す。
歩いていて集落のあたりまで戻ったら、地元の方かな?という感じの老人に遭遇。ダメ元で、一番近くで電話をかけられるところはどこか?と尋ねてみたら、なんと携帯を貸してくれるとのこと。auだけギリギリ入る地域なんだそうで・・・。
お礼を述べて、BMWのディーラーにかけて見たが、残念ながら電波が弱くてつながらず・・・。再度お礼を述べて、さらに街方面へと歩くことにした。
しばらく行くと、電波がつながって来たのか、ディーラーの営業と連絡が着いた。「ちょっと困ったことになって」と相談したところ、保険会社のロードサービスを手配していただけることに。新車購入時になんとなく気分でBMWの提携保険に切り替えていたのだが、それがまさか思い切り役立つことになるとは・・・。
さらに歩いて、何度か食事に寄ったこともある「ジェラテリアHANA」まで来た。
ともかく、ちょっと休みたいなと思って店内に入ると、もう間も無く閉店で持ち帰りのジェラートだけしかやっていないと・・・。
まあ、仕方ないと思ったのだが、「バイクが壊れちゃいましてレッカー待ってるので、コーヒーだけでも飲めればと思ったんだけど・・・」と呟いてしまっところ、アルバイトの可愛らしいお姉さんは、まあ大変!といった具合で、店長に声をかけてくれ、それならしばらく店内でどうぞと。掃除とかしちゃうのでウルサイかも知れませんがよろしいですか?・・・そりゃもう!全然構いません!
実は、そもそもろくに水分を取っていなかったので喉もカラカラだったし、飯も食ってなかった。なので、普段はブラック派なのだが、アイスコーヒーにミルクとガムシロップを全部入れて飲み、カロリーを補給した。アイス食えば良かったかも知れないけど。ちょっと、落ち着いてアイス食える気分じゃなかったので・・・。
また今度、ひっそりとちゃんと食事もしに行きますので!閉店後に長居させていただいてしまって、本当にありがとうございました!
とりわけ、保険会社やレッカーサービスと何度か電話するたびに、気をつかって声をかけてくれ、レッカーが来るまで店内で待っていていいですよと言ってくれたお姉さんには、・・・20年前なら惚れてしまったところだろうというくらいの感謝だ。(←気持ち悪いw)
まあ、20年前じゃないからそう舞い上がったりはしないが、珍しくあんな可愛らしい女性と会話をするのだったら、せめてヒゲくらい剃ってくれば良かった。いや、それ以前に最近忙しくて伸び放題で飛び出ていた鼻毛くらい切って来れば良かった。歳をとると鼻毛が伸びるんだ。昔は、なぜおっさんは鼻毛が飛び出てるのだろうと思っていたけど。理由は簡単。若いうちは放置したってそうそう飛び出て来なかったというだけだ。おっさんの鼻毛が飛び出ているのではない。若者は鼻毛が引っ込んでいる、というのが正しい認識の仕方であろう。
ま、そんなこんなで、意味もない思考を巡らせながら、不安はありつつも、何とか時間を潰していると手配を受けたレッカー会社が到着。カフェのマスターに改めてお礼を言って、レッカー業者のトラックに同乗してバイクのもとへ。
老夫婦の秩父の業者さんで、明るいうちにと急いで来てくれたそうだ。無事に積み込みも出来て、最寄りの駅まで送ってもらったが、その道道、電車の乗り換えについて何度も説明してくれたり。じいさんの言うことは訛りが効いててちょっとわからないところが多かったけど。秩父訛りなんてあるのか?でも、だいたいはわかったし、親切にしてくれていることは間違いなくわかったから、何も問題はない。ありがとう。
電車で帰るのは正直つらかった。
メンタルに疲れも出たし、バイク装備で防寒インナーなんて着てるから暑いし、そもそもライダーファッションで大宮あたりからのターミナル駅を歩くのはちょっと違和感あるし。帰ったら妻は怒りそうだし(顔見るまでは心配させたくないので、「渋滞してて遅くなる」と嘘ついてあったので・・・)。
3時間だけ何とかリフレッシュして・・・なんて思ったら、とんだ目にあった1日だった。
先々週に1年点検したばかりのGS。いきなりまた壊してしまうとは・・・。
思えばこの1年で、捕まったり転けたり転けたり、そして今度はレッカーと。なんだかいつもスリル満点大冒険なんだが、「アドベンチャー」ってそういうことじゃないよな?という違和感が拭えないw
とは言え、逆に考えれば、今回もこんなもので、大破もしてなければ怪我もしていない。右左の外装慣らしも済んだし、引き起こしも慣れてきたし。
アドベンチャーバイクを盆栽にするのは俺の趣味ではないので、割り切って楽しんでいけばいいのかなと思うことにしよう。
高いお金を払って買ったBMWだから大事に乗りたい、そういう気持ちもあるのだが、一方でGSというバイクに乗ってロードだけ走りピカピカ状態というのもまた嫌なのは確か。そういうことならF900XRか、いっそRNineTとか買ったよ、というね。
試乗を何度もして、一番「これ足着かねえし曲がりにくいな」と思ったF850GSを敢えて買ったのは、やはりアドベンチャーの為ゆえなので。
バイクは明日以降にディーラーに届くそうで。レバーは、どうせブレーキレバーは前に折ってて、ショートレバーに変えるつもりだったので、まあいいかなと。ブラケット側の修理賃が高くつかなければいいけど・・・。
* * *
結局、壊れていたピボット部はクラッチレバーとのAssyだということで15000円強、工賃入れて2万弱かかった。とは言え、レッカー代が保険で賄えたし、予備レバーも手に入った(レバーそのものはやはり折れてなかった)し・・・まあ、許容範囲かな。
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